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『たったひとつの冴えたやりかた』 ―”これがたったひとつの冴えたやりかた” 【SF】【ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア】
2009/01/04 22:09

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
(1987/10)
ジェイムズ,ジュニア ティプトリー浅倉 久志

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たったひとつの冴えたやりかた
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
浅倉久志訳

同じ世界観を持つ連作短編3作
原作者名が男っぽいけど、本名をアリスシェルドンという女性が書いています。
その事実は公表されたときは衝撃を受けたと訳者が言っていましたが、
この短編はとても女性っぽい小説だと読んでいて思っていました。(他の作品は男性っぽいみたいですが)
少女が主人公だし完全な先入観と思い込みですが、(男でも少女の物語は書きますしね)
小説内で描かれる女性やらなにゃらが男が書くものとはちょっと違う気がした。
まあ、それは訳者がそういう風に翻訳をやわらかくしたとか、表紙の絵的に思い込んでいたとか、
そういうのがあるのかもしれないが、感情面を非常に繊細に書いているのは、やはり女性的な印象を受けた。
どっちがどっちを得意とかの性差的なものが、あるとは思ってないけど。


たったひとつの冴えたやりかた/原題:The Only Neat Thing To Do
16歳の少女コーティが、誕生日にプレゼントしてもらった宇宙船を改造し、
宇宙の未知の領域への探検に乗り出す話。
未知の領域で探査していた宇宙船の記録を読み取るうちに、未知の生物との接触と、
それによる人類への驚異を目の当たりにしたときに、少女が選んだたったひとつしかない方法とは?
未知の生物は、ある生物の脳みそに入り込むことで知能を得、その生物と共生して暮らしていた。
偶然か必然か、その生物がコーティの頭にも入り込んだのだが、
彼女ら(その生物に性別はない?)はともに友人のようになっていく。
しゃべるときは彼女の口を借りて、しゃべる。名前はシロベーン。

ネタバレ彼らは各何世代かにわたる教育と、躾の中で理性的に生きていたのだが、あるとき重いもよらない事態が起こる。それは、我ら人類に共生した際に、宇宙航行中の冷凍睡眠に入ったとき、高齢の生物は死亡してしまい、卵から付加したある生物が本能のまま生物をのっとり、食い荒らしてしまう事態になった。その宇宙船の中に入ってしまったコーティだが、彼女にとりついていたシロベーンも本能に打ち勝てなくなっていき、彼女を蝕み始める(教育を中途半端にしか受けていなかったから)。しかし、彼女はその宇宙船を太陽に向け、諸共破壊することで、人類への感染を防止する。

たったひとつしかない(であろう)選択に迫られて、勇気ある決断をする。
短編が語られる前振りとして、未来からこの話が語られると言う体裁を短編前後に足されている。
(短編を有機的に結合するために、よくある書く下ろし的なアレです)
かわいい内容かと思いきや、そうとう残酷なラストで終わっているのには、びっくり。
活動的で、豊かな感性を持ち、理知的な主人公のコーティには好印象。(書いた当時が70歳って本当!?)

書評やなんかでは、「読み終わる前にハンカチが必要なかったら、あなたは人間ではない」とまで言わしめているようで、ハードルが相当高くなっているが、普通に面白くてお勧めなので、
泣かなくてもいいから、読んでみてください。


グッドナイト、スイートハーツ/原題:Good night, Sweetheats
SF的なギミック、クローンや宇宙船とかの話がものすごく上手く取り込んであって面白い。
前の話とも世界観をリンクさせていたりもするので、読みやすくはなる。

自分が愛した女性とのたまたまな再会をする。
自分は冷凍睡眠などで、何十年も生きていたが、彼女もまだ外見上は非常に若い。
そんななか、さらにその彼女のクローンも現れる。

最終的には、どっちを選ぶ?などの選択(そこが話の核ではないけど)や、
自由と愛?の選択など、『たったひとつの〜』ばりに難しい選択を選ぶ。

ラストの選択は意味わかんなかったが、自由を選んだってことでいいのか?


衝突/原題:Collision
これが短編の中でもっとも長い。そして、ある意味一番面白い。
タイトルでもあるとおり、衝突の話だ。
何の衝突かと言うと、異星人同士のファーストコンタクトの話なのだ。

この時代の時点で、多くの異星人と接触していたヒューマン(人類)は、マニュアルなどが作られていて、友好的にいい関係を結べるような方法を持っていた。
しかし、一方相手方には、こちらを憎む理由があった。
というのも、ヒューマンの一部はこちら側に反旗を翻して悪逆の限りを尽くしている勢力がいて、
そっちが相手の人間を殺しまくっていたからだ。
形や言語が似ているヒューマンに警戒心を異常に持ち、中々理解しあえない彼らとのやり取り。
極めて微妙な立場に立たされた人々の戦争回避への努力は報われるか?

という抜群に面白い題材を面白く描いている。
どちらの陣営にも視点があって、双方に誤解や偏見が見えたりするので、本当に歯がゆかったりする。
生物としてのありかたも大分違っていて、酸素ではなく二酸化炭素で呼吸していたり、
水がかかるとやけどしちゃうとか、全然文化やら何やらが違う。
しかも、はじめからマイナススタートという最悪のもので、どうなるかドキドキ。
読み応えはあります。

あと、イラストがついているので、すごく異星人のビジュアル化が非常に助かる。




最後の解説に書いてあるけど、この作者の死に方がショック。
ほぼ自殺に近い死に方で、夫とともに拳銃で頭をぶち抜いて死んでいる。
夫の健康上の理由から未来を絶望した上での自殺みたいだ。

残念だ。


カテゴリ:小説SF・ファンタジー

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