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2007.09.05
愛のひだりがわ
「愛のひだりがわ」筒井康隆
筒井康隆といえば「時をかける少女」と「日本以外全部沈没」、それと変なおっさんくらいのイメージしかないほど、ほとんど(というかまったく)筒井作品を読んだ事がなかった。
今回初めてとった本は、「愛のひだりがわ」と言う本だ。
ジュブナイルと言えばジュブナイルだが、最終的には黄門様的な大団円(といっても黄門様は見たことがないが)という意外な結末であった。
しかも舞台が現代とは違う別の世界で、荒んだ近未来の日本というSFとしか思えない設定や、少女が犬と会話できると言うなんともファンタジックな世界観!!すさまじい。僕はなんという世界に入ったのか。だが、まず世界を理解するよりも、まず1人の少女を理解しなければならなかった。
主人公の少女の名は愛である。彼女は、左腕が不自由で母とは死別し、父は行方不明、あげくに最低な人たちと暮らしており、まさに不幸な身の上。ここからして、健気な少女が不幸に負けずにがんばっていく姿を想像する。まさにそのとおり、彼女はその環境から脱出し、行方不明の父を探す旅に行く。
ただでさえ少女が旅などというのは危険であるが、左手は不自由な上に、外は犯罪がはびこる危険地帯である。まさに命がけの冒険なのである。
だが、彼女に対してステレオタイプ的に弱弱しい姿を想像していると、途中あっけにとられる。旅をしようと決意したことからして、彼女は既に大人も天晴れな強い自尊心をもった人間なのだが、さまざまな苦難に負けない強い心を既に持っていたのだ。前半はさすがにいろいろな人に守られながら旅を続けるのだが、後半にかけては、強盗に背後から強襲し金属バットを頭に叩きつけるなどの豪腕さを見せ始める。まあ気持ちが分かる分、共感は出来るのだが、そのたくましさ!にはと驚かされた。
成長してたくましくなるのではなく、たくましさから人間的な成長(知性とか理性)といく話もあるものかと、思い知らされた。たぶん意図としては、教育に対する作者の思いがあるのだろう。
さらに言えば、単純に成長だけではなく、それにより失われてしまうものも同時に加えている。失ったものは最後の一文を見れば分かるのだが、この失うことへの切なさと言うものに対する共感があって、僕はここが一番のポイントだと思った。子供の感性というのか、純粋な感じ方というものを、成長すると代償として失わなければならないのは、よく理解できるつもりである。大人になるということではなく、色々知れば知るほど、失われていくと言った感じだ。
この辺で言えば、魔女の宅急便を思い出す。そういえば、どことなく通ずるところがあるかもしれない。
最終的に彼女は父とのけりをつける。父は彼女にとってもはやけりをつけるべき過去であるのだ。彼女を支えた登場人物たちも、同じような過去のものとしての決別を迎えていた。そして幕。
初の筒井作品だったが、非常に面白く読めた。さらに何より読みやすくて、久しぶりに本を一気に読んでしまった。
オススメできる1冊である。
おすすめの小説、ホラー
筒井康隆といえば「時をかける少女」と「日本以外全部沈没」、それと変なおっさんくらいのイメージしかないほど、ほとんど(というかまったく)筒井作品を読んだ事がなかった。
今回初めてとった本は、「愛のひだりがわ」と言う本だ。
![]() | 愛のひだりがわ (新潮文庫) 筒井 康隆 (2006/07) 新潮社 この商品の詳細を見る |
ジュブナイルと言えばジュブナイルだが、最終的には黄門様的な大団円(といっても黄門様は見たことがないが)という意外な結末であった。
しかも舞台が現代とは違う別の世界で、荒んだ近未来の日本というSFとしか思えない設定や、少女が犬と会話できると言うなんともファンタジックな世界観!!すさまじい。僕はなんという世界に入ったのか。だが、まず世界を理解するよりも、まず1人の少女を理解しなければならなかった。
主人公の少女の名は愛である。彼女は、左腕が不自由で母とは死別し、父は行方不明、あげくに最低な人たちと暮らしており、まさに不幸な身の上。ここからして、健気な少女が不幸に負けずにがんばっていく姿を想像する。まさにそのとおり、彼女はその環境から脱出し、行方不明の父を探す旅に行く。
ただでさえ少女が旅などというのは危険であるが、左手は不自由な上に、外は犯罪がはびこる危険地帯である。まさに命がけの冒険なのである。
だが、彼女に対してステレオタイプ的に弱弱しい姿を想像していると、途中あっけにとられる。旅をしようと決意したことからして、彼女は既に大人も天晴れな強い自尊心をもった人間なのだが、さまざまな苦難に負けない強い心を既に持っていたのだ。前半はさすがにいろいろな人に守られながら旅を続けるのだが、後半にかけては、強盗に背後から強襲し金属バットを頭に叩きつけるなどの豪腕さを見せ始める。まあ気持ちが分かる分、共感は出来るのだが、そのたくましさ!にはと驚かされた。
成長してたくましくなるのではなく、たくましさから人間的な成長(知性とか理性)といく話もあるものかと、思い知らされた。たぶん意図としては、教育に対する作者の思いがあるのだろう。
さらに言えば、単純に成長だけではなく、それにより失われてしまうものも同時に加えている。失ったものは最後の一文を見れば分かるのだが、この失うことへの切なさと言うものに対する共感があって、僕はここが一番のポイントだと思った。子供の感性というのか、純粋な感じ方というものを、成長すると代償として失わなければならないのは、よく理解できるつもりである。大人になるということではなく、色々知れば知るほど、失われていくと言った感じだ。
この辺で言えば、魔女の宅急便を思い出す。そういえば、どことなく通ずるところがあるかもしれない。
最終的に彼女は父とのけりをつける。父は彼女にとってもはやけりをつけるべき過去であるのだ。彼女を支えた登場人物たちも、同じような過去のものとしての決別を迎えていた。そして幕。
初の筒井作品だったが、非常に面白く読めた。さらに何より読みやすくて、久しぶりに本を一気に読んでしまった。
オススメできる1冊である。
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