2007.09.07 流星ワゴン
流星ワゴン重松清

主人公は、死んでしまってもいいと思った。
息子は、受験の失敗から学校に行かなくなり、妻は見知らぬ男と会うために帰ってこない日がある。自分は、リストラの洗礼を受け、病院で死を待つだけの父親の見舞いに「御車代」を目当てに行く日々。
もう疲れた。このまま死んでしまってもどうでもいい。
そう思った瞬間、彼の前に止まったのは、一台のワゴンだった。

それが、橋本さん親子との出会いだった。

流星ワゴン 流星ワゴン
重松 清 (2002/02)
講談社
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これはどうしようもない現実に疲れてしまった人にとって、とても大切な小説です。

主人公は、過去の大切な場所、分岐点をワゴンに乗って振り返っていきます。そこで、そのときは気が付かなかった大切な分岐点に気付いていきます。それは息子との関係であったり、妻との関係であったり、父親との関係であったりします。それをどのように歩んでいくのか、それがこの小説で書かれていることです。

これは過去をどうしようかと言う話ではありません。未来をどうしたいのか、と言う物語です。そして、そのための自分自身を見つめる、相手を見つめる物語なのです。

ちょっと疲れてしまったとき、この小説は凄くいい作品だと思う。
年齢的に主人公と共感を持てると言うことはないだろうけど、根本的な面で理解ができたように感じる。それは、多分親と子の物語でもあったからだろう。父親と息子の関係性みたいなものに、寧ろ共感する部分があったかもしれない。

作中では父親は自分と同年代として出てくる。父親とは長い間仲が悪かったが、父親と一人の人間として向き合ってみたときどう思うか。作品中では「朋輩」で語り合うことで、今まで抱いてきた恐い父親のイメージでは見えなかった、親父の弱い部分とかが見えてくる。逆に父親は、知らなかった息子(主人公)の思いを知ることとなり、ショックを受ける。

その部分での親と子の関係が非常にファンタジックで魔法のような展開にリアリティを与えている。


読み終わったとき、凄く心が強くなれるような気がする。
落ち込んだ気分を治す動機付けを与えてくれる。
これは他力本願ではなく、自力で立ち上がるための力を与えてくれる作品である。
おすすめの小説、ホラー
チョコレートアンダーグラウンドアレックス・シアラー著 金原瑞人訳
チョコレートだけに表紙がおいしそうな茶色というのが、食欲をそそりますね(笑)

チョコレート・アンダーグラウンド チョコレート・アンダーグラウンド
アレックス シアラー (2004/05)
求龍堂
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健全健康党が選挙で勝利してから、チョコレートを食べることが禁じられた国。そこがこの小説の舞台である。チョコレートを売ることはもちろん作ることも禁じられ、甘いものはすべて健全健康党の指定するもの(とても食べられたものじゃない。パッケージの箱のほうがおいしいだろう。)に変えられていく。生活のすべてが健全健康の名の下に統制された社会。

その中で、人々は健全健康党を支持するか、逆らわないように順応する道を選ぶしかなかった。しかし、ハントリーとスマッジャーの2人の少年はチョコレートを食べることを決して諦めなかった。彼らは、チョコレートを密造し、再びチョコレートの食べられる社会を目指して地下活動を続ける。

この小説で面白い点は、チョコレートという凄く分かりやすいものを取り入れている点だ。チョコレートとはもちろん、自由や権利などの形のない抽象的な分かりにくい代物の例えである。子供からすれば、自由や権利などといっても理解しにくいだろう。それが、チョコレートというきわめて具体的で分かりやすい例えによって、理解しやすいトリックが入っている。さらに、健康健全党という如何にも正しいもののような健全とした悪役が存在する。これは相当な皮肉であろう。表面上はどんなに正しいことを言おうが、その実、人々を不幸にすると言うのをこれほど分かりやすく表すものがあるだろうか(笑)もちろん、これをナチス独裁を例えたものと考えるのもいい。

あらゆる部分でこういう分かりやすいトリックがあると言う点で、すごく面白い小説だと思う。字も大きいし、子供を意識して書いているのが分かる。内容的にも子供に読んでもらいたい本だろう。主人公たちの諦めない気持ちと、正義を貫く思いを感じられる作品である。
万人向け!!

ちなみに、作者紹介のところで、
「見かけはもうオジサンなのに子どもの気持ちがよくわかる、とてもピュアな心を持ったイギリスの作家」
って。
なごむなぁ(笑)。。。
おすすめの小説、ホラー