日本アパッチ族 (光文社文庫)日本アパッチ族 (光文社文庫)
(1999/08)
小松 左京

商品詳細を見る


日本アパッチ族
小松 左京

小松左京の処女長編

なんだかんだ言って、小松左京の最高傑作だという声も聞く本作

まず、荒唐無稽さが、飛びぬけている。
なんと、鉄を食う人々の話なのだ
人間が鉄を食うなんて発想それ自体が、もはや非凡。
後の作品にも影響を与えているとか、いないとか。

アパッチというのは実際に戦後に存在していて、
鉄くずを盗み生計を立てていた最底辺の貧民だったそうだが、
それをヒント、というかモチーフにして、本作は描かれている。

鉄を食うと人間はどうなるのか?鉄の糞をするのか?体は鉄でできるのか?
そういった設定の数々をSF的な視点で緻密に書いてある。
もちろん、鉄を食うから、体の組成も変化して体が金属化するし、鉄を食って鋼の糞を出す。
鋼の糞はが良質でコストもかからないから、日本の製鉄業が大打撃を被るとか、すごく面白いことにもつながるw
やってることは馬鹿げたことなのに、実物にあるものとしてのシミュレーションに納得力がある。
この作品をサイエンスフィクションといっていいのか分からないが、
荒唐無稽な舞台での”リアル”という意味では、”SF”はかなり高いレベルを持っている。
しかし、そのトンデモとハードSFのバランスの絶妙さはすごい。

もともと、鉄を食う人=アパッチは、社会に捨てられ追放された人々の集合体であり、
彼らが社会を築き、普通の人間との対立を深めていくのが、この作品のメインストーリーとなる。
その中で、アパッチはもはや人間ではなく、新人類的・超人類的なモノとして描かれる。
これはSFという枠にはまらず、社会に対する強烈なメッセージ性も感じられるし、ある種の憧れみたいなものもある。
多分、いろんなところにこじつけもできる。
それは見る人によって感じる部分が違うだろう。
小松さんとしては、戦後まもなくの廃墟のイメージへの郷愁とかあったのだろうか。

個人的には、小松さんの社会を見る目、社会に対して感じている部分がものすごく分かった気がする。
戦争があって、ものすごいエネルギーを消費したのに、
まだ残っているこのすさまじいエネルギーのほとばしりは何だろう。
小松さん自体もものすごいエネルギーでこれを書いたに違いない。
それは、戦後なにもかもが失われたからこそのエネルギーだったのか?
いわゆる、ハングリーの精神!?
社会の中で、強力なエネルギーをもっているのは、
本来的にはこうしたアパッチのような人々だったのではないか?
そういうことを示してくれた作品。

設定自体がぶっ飛んでて、
なおかつラストまでにいたるテンションがすさまじいので、
小松左京読みたいなら、おすすめ。


おすすめの小説、ホラー