夢遊病者の死 (角川ホラー文庫)夢遊病者の死 (角川ホラー文庫)
(2000/06)
江戸川 乱歩

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乱歩は久々読んだ。

短編集・夢遊病者の死(角川ホラー文庫)

石榴  オススメ!
赤い部屋  オススメ!
夢遊病者の死  オススメ!
指輪
毒草
日記帳
接吻
モノグラム
算盤が恋を語る話
妻に失恋した男
盗難  オススメ!

覆面の舞踏者
二癈人  オススメ!
  オススメ!
おすすめの小説、ホラー
石榴(ざくろ)』は、硫酸殺人事件にまつわる二転三転のどんでん返しのあるミステリ小説。かなり面白く、オススメの短編である。加害者と被害者の候補が2人いるのだが、彼らが加害者か被害者かというので何回かどんでん返しがある。これは過去の事件を2人の人物が話すと言う形式(片方が話し一方が聞く)。推理小説好きの警官(私)が同じく推理小説好きの猪俣氏と言う人物に話をするというもの。まず、事件が起き、被害者加害者が断定されるが、私はそれが逆であると言う真相にたどりつく。しかし、猪俣氏がドンデン返す。そして、猪俣氏の正体の披露、という流れ。作中で、じゃんけんの手の読み合いは、まさに探偵と犯人のやり取りと似ているといったのは印象的だった。曰く、相手がグーで自分がチョキで負けたとき、相手は自分が次はグーに勝つパーで来ると思っているから、チョキを出そう、と考えていると考えているから、パーを出そう・・・みたいな深読みは、犯人と探偵とのやり取りそのものだと。この事件はまさにそれであって、その例えは非常に分かりやすいことが分かる。ちなみに題名の石榴はその殺人事件での被害者の様の比喩。想像すると、ちょいグロイね。でも、この本の中では、一番面白かったと言える。

グロさと言うわけではないが、殺人の描写と死体の描写が生々しいのは、最後にある『』であろう。厭人病者であり、極端に人との接触を避ける人物・柾木愛蔵が、恋焦がれる木下芙蓉を嫉妬のあまり殺してしまう。その後の彼女の死体の魅力に取り付かれ、何とか腐敗の進行を止めようとするが、それをとめることは出来ず、最終的には彼は死んだ状態で発見される(感染症?)。愛蔵は芙蓉の情事を覗き見するという異常な行動に走っていくんだけど、そうした中でも愛蔵は冷静に芙蓉を殺す方法を考えていて、淡々とこなしてしまうと言う描写が非常にリアルに感じた。異常者は気が狂っているんじゃなく、普段の行為として入れ込んでしまえる部分に異常があるのだと思っていて、そうした部分での描写は凄い。死体も安易なグロ表現ではなく、死体が眼前とあるような生々しさが伝わる。非常に怪奇的であり非常に官能的な部分でまさに江戸川乱歩だと感じる短編だった。

赤い部屋』は、秘密結社の集う、怪しい赤い部屋での出来事。ある男が自分の犯してきた100の殺人について述べる。しかし、それは単なる殺人ではない。一切、逮捕することの出来ぬ殺人なのだ。というのも、人から見れば善意の行為としか受け取られないようなことで人の死を実現させるのだ。「危ない」と言う事で、びっくりさせて線路に落下させるとか、天邪鬼な盲目の人に「右は危ないですよ」といって左方向に行かせ、落下死させるとか、彼の手口はどれも周りから見れば善意からとしかいえないようなものであった。犯罪とは何か、殺人とは何か、迷わせる内容となっている。細かいところを見ていけば、違法になりそうな気もするが、殺人に対する責任の所在論に対する投げかけにはなっていると思う。で、オチとしては別にそういった哲学的なものではなくて、その男の一興だった。面白い。秘密結社として同じものとして『覆面の舞踏者』も違った意味で面白かった。

夢遊病者の死』。夢遊病に悩む男が、ある日、目を覚ますと父親の死んでいるのを発見する。自分の寝ている間に自分が殺してしまったと早とちりして、逃走してしまうが、実は・・・、な展開。自分の知らない自分への恐怖みたいなもの、ホラーとして読める。
同じ夢遊病を扱ったものとして『二癈人』が面白い。これは、ある人物にその人自身が夢遊病者だと思い込ませることで、殺人事件が起きたときに、自分を殺人事件の犯人だと思わせるトリックをつかったものだ。

指輪』は、AとBの会話のみで構成されている。列車の中で盗んだ指輪を問い詰められたときに、どうやって隠したのかと言う話。すげえ短い。この短さで、これだけ書けるというのも相当凄い。『盗難』も似たような部分があって、ミステリとしての面白さがある。最終的には謎が謎として解かれずに、読者に任せていると言う点ではちょっと違うが、個人的にはこちらのほうが好きかもしれない。

毒草』は、堕胎に対する罪意識。といっても女の人のほうではなくて、男の人がふい堕胎する草について述べたところ、それを聞いていた女が堕胎したということを聞いて不安になるという話だ。やはり、生まれえぬ命とはいえ、罪悪感は人殺しと変わらないと言う部分の暗い面を描いている。

日記帳』と『算盤が恋を語る話』は似ていて、伝えられない想いを暗号にして送ると言うもの。拒絶されても、そう解読できるのは偶然だと言い張れることで自尊心を保てると言う超後ろ向きな発想。どちらも回りくどすぎて気付いてもらえないと言う結末。『モノグラム』も伝えられないという意味では同じだが、純粋に笑えると言う点で上の2つと違うかも。

妻に失恋した男』はミステリとして読めて、愛されないために自殺した夫だが、実は妻と男によって殺されたのでは?という話。

接吻』は、妻に翻弄される夫の話。いや、なんか違うけど。妻にまんまと誤魔化されたかもしれない男の話。あるいは、献身的な妻なのに勘違いして嫉妬していたかっこ悪い男の話かな。

』は、怪奇モノ。短編の中でも少し異様ではあった。指が動かなくてもそれ以前に怪奇的な雰囲気がかもされている。

解説で「奇妙な味」という言葉を使っていたが、そうした奇妙な味わいというのか、江戸川乱歩が「それ」を持つ作家であると再確認できたと思う。
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