僧正殺人事件―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈3〉 (集英社文庫)僧正殺人事件―乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10〈3〉 (集英社文庫)
(1999/05)
S.S. ヴァン・ダインS.S. Van Dine

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僧正殺人事件The Bishop Murder Case
ヴァン・ダイン

ここでいう僧正とは、チェスのビショップを表している。
僧正と頭についているからといって、早まってはいけない。
坊さんが殺される話ではないのだ。
東野圭吾が、鑑賞というよくわからない位置であとがき?として、最後に感想を書いているのだが、
「僕は坊さんが殺される話だと思っていたよハハハ」(雰囲気)みたいなノリで書いていたのが印象的(笑)
その中で驚いたことに東野さんは、『僧正〜』を今まで読んでいなかったらしい。
まあ、小説家だからって、何でもかんでも読めるわけではないということだろう。

僧正殺人はチェスのビショップを意味するもので、重要な意味を持っているかのようにしているが、
このミステリで重要な役割を果たすのは、チェスと言うよりも寧ろ、マザーグースという童謡を用いた見立殺人のほうだろう。
東野さんも実はマザーグースを取り扱った『白馬山荘殺人事件』というのを書いてあるそうだが、
これはもちろん『僧正〜』をモチーフにしたものではなく、完全なる偶然だそうだ。
正直、マザーグースは知らないので、ピンと来るものはなかったのだが、
西洋ではかなり知られていて、よく使われているものらしく、面白いのかもしれない。

ミステリに関しては王道で、意地悪な部分は一切ない。
純粋なミステリを楽しむには素晴らしい小説であることに疑いはない。
探偵役はファイロ・ヴァンス。アマチュア探偵だそうだ。
彼の慎重且つ冷静な分析と、知識の豊富さなどは、探偵役として必要十分なもの。
科学的哲学的、あるいは心理学的な描写は彼を知的な存在として見せるための要素として、
折を見てでてくるが、事件にとって必ずしも必要な解釈ではないように思えたが、
それもくどくはなく楽しめる範囲だった。

本格ミステリと言うのだろうか、
ヴァンダイン自体が純粋なミステリを好む人らしく、
アガサクリスティの『アクロイド殺し』を酷評したとか、しないとか(ウィキペディア)
確かに、言うだけあって、純粋な部分しかないけど、ミステリの面白さ=謎解きとしての魅力はある。
見立の動機がユーモアと言われても・・・な部分もあるが、
それはその人物の背景を考えると、
凡人では解釈しようもない心の動きがあったと思うしかないし、そうすべきだろう。

だが、それら以上に凄く印象的だったのは、
探偵役が最後に犯人を殺してしまったと言う事実だ。
といっても露骨に殺したのではなく、
犯人がある人物に飲ませようとして用意した毒入りのグラスを、入れ替えて犯人を死なせたのだ。
犯人の自業自得の面も否定し得ないが、殺した事実は変わらない。
それは証拠がなく、どうしても犯人として立証できないというところからの、殺人であった。
結局自殺ということになったけど、この結末は相当酷いものである。
別に怒りを感じるとか、はないけど、
さすがに純粋なミステリとして、こういうオチってアリになっちゃうの?と感じずにはいられない。


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