蒼穹の昴〈上〉蒼穹の昴〈上〉
(1996/04)
浅田 次郎

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蒼穹の昴
浅田次郎


清朝末期の百日維新(戊戌の政変)を描いた大作
完全な史実というよりもフィクションを入れた娯楽小説という見方のほうがいい。
三国志という歴史書に対する三国志演義みたいな立ち位置かな。

とはいうものの、やはりかなり史実としても面白いと思います。
まず、科挙制度と呼ばれる中国で伝統的に行われていた部分は、多分その当時のものをできるだけ忠実に書いているはずで、勉強になります。
科挙っていうのは、今で言う公務員試験みたいなもの。
いくつもの段階があって、より優秀な人が選りすぐられていくようなシステム。
主人公のひとり、梁文秀の目を通して、当時の人々の科挙に対する気持ちや反応などを見ることが出来ます。
これに合格するために人生を振ってることなんてのもザラだったみたいです。
今の受験戦争の比ではなかったかもしれませんね。なにせ、町をあげて受験に送るみたいなことだったらしいですし。
しかも4年に一度しかなく、落ちたときの衝撃は相当のものだったでしょうね。
いやはや、官僚になるにも相当めんどくさいものがあったようです。
逆に、そういう中にいるから、選民的な思想も無理もないですね。

梁文秀って、恐らく架空の人物になるんだけど、ぐいぐい歴史に食い込んでくるので、本当の人なのかとずっと思ってました。
モデルの人はいるみたいですが、ここはフィクションみたいです。

もう一人の主人公は、李春雲という人物。こちらも恐らく架空。
上であげた梁文秀とは幼い頃からの親しい仲です。
梁文秀がそれなりにいい家である一方で、彼は糞を拾って生計を立てるというどん底の貧乏でした。
しかし、彼を救った言葉が白太太という星占いの予言でした。
要約すると、すげー偉くなって、富をすべて手に入れるとか何とか。
彼は貧乏を脱出するために、運命をも跳ね除けながら、努力していきます。

まあ、あまりネタバレとかするのも、
偶然、ここに覗きに来た人に申し訳ないのでこれ以上は言えませんが、
全部通して、凄く面白い。
浅田次郎を全く読んだことないですが、いやーここまでよく書ける人だと感心しました。
今まで読んでこなかったの失礼でしたね。
まあ、この作品は浅田次郎の最高傑作と言っているのも頷ける。

まず、この時代を書こうと思った時点で、うれしいですね。
明治維新というのは著作が多いですが、こういった中国のこの時代の変革時期の小説って、
あんまし触れられてない気がするんですよね。
あったとしても、孫文とか毛沢東とかくらいですよね。
百日維新後じゃないかな、大体。そこを敢えて持ってくるところが、素晴らしい。
自分はこういうの好きで、こういう時期のを小説以外で見てきましたが、やっぱ変革の時代って面白いね。

百日維新はたった100日で維新しちゃうんじゃなくて、100日で失敗に終わるって意味です。
普通は成功して、華々しく終わり。単純なハッピーエンドじゃない。
だけど、その当時の彼らはどう考え、そしてその後に何を遺していくのか、
そういう部分が浅田さんの見方としても非常に面白かった。
西太后は悪女みたいなイメージあったし、そのほかの人物もやっぱり、漠然と滅びるも者として馬鹿にしていたけど、
結構優秀だったように書かれている。
当時の見方を劇的に(というのは大げさだが)変えてくれる素敵な本でした。
(ま、フィクションですけどね)

ちなみに、孫文(孫中山)は、名前だけ出てきますし、
毛沢東も一応出てきます。

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