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スタイルズの怪事件/原題:The Mysterious Affair at Styles
アガサ・クリスティ
クリスティの処女作にして、名探偵エルキュール・ポワロ初登場の小説
一般的には、「スタイルズ荘の怪事件」として知られている本作
クリスティといえば(自分の中で)、『そして誰もいなくなった』『オリエント急行殺人事件』『アクロイド殺し』で、
どれも(当時の)ミステリの既存の枠にとらわれない大胆なものが多かったのですが、
この作品では割と既存のミステリといった感じ。
とはいえ、満足いく内容といって間違いないでしょう。
ポワロの観察と推理と巧みな言葉に、その友人ヘイスティングズとともに読者を翻弄(!)し、
叙述で惑わしてくれる手際は面白いです。
スタイルズ荘で起きた女主人毒殺殺人の犯人は誰か?
誰もが殺しそうだし、誰もが殺しそうではない絶妙な人物配置
ポワロも名探偵ながら推理の間違いを犯すし、
読者側のヘイスティングズも事件の当事者の一人として、逆に真相が見えてこない
ああでもない、こうでもないと読んでいて飽きませんね
ポワロさん曰く「最も単純な説明がつねに最も無理のない説明だ」そうだ(p138)
これはある種、真理だと思った。
意外に人間はシンプルなものに目がいかないものだ
笑ったのが、
「あのロンドンから来て、あれこれ詮索したり、無遠慮に尋問したりする二人の探偵なんかとはまるで格違いでいらっしゃいます」
と、ポワロさんをドーカスが評しているところ。
探偵とはホー○ズ、○トソンのこと?
2008.11.09
『東亰異聞』 ―夜が人のものであった時代は終わった 【怪奇ミステリ】【小野不由美】
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東亰異聞
小野 不由美
//
私たちの世界とはちょっと似ていてちょっと違うパラレルワールド
その世界では、帝都は東亰<とうけい>と呼ばれていた。
明治維新から29年、開国して西欧化のすすむ東亰だったが、奇怪な事件が発生していた。
人を突き落として火達磨にする火炎魔人、
そして夜に現れては辻斬りを行う闇御前である
彼らの目的は何なのか・・・彼らの正体は?
また事件のほかにも、珍妙な話を交換するという読売りだの、法外な値段を要求する蕎麦屋だの、
人魂売りだのと、奇怪な人物が跋扈する。まさに百鬼夜行、魑魅魍魎の世。
そんな中、事件の取材を行う平河新太郎は、事件を追ううちに
鷹司家のお家騒動とのかかわりに気づく・・・
//
「帝都物語」も読んでるんですけど、雰囲気が似てますね。
「帝都」と違って、どちらかといえば、ミステリの部類に入っていると思うんだけど、
最後の最後の展開で、世界観が180度変わりましたね。。。
いや、世界観というか、読者的には、妖怪→現実的な話→妖怪
なので、展開としてのどんでん返し感は大きかった。
といっても、ミステリとしての一定の答えというか、解決は現実的な話として終わります。
東亰は東京とは別の世界を示す記号で、現実ですらもないからアリなんですけど、
割と現実感漂ってる作風でした。荒唐無稽といえなくもないけど、割と仕組みは現実世界の話。
魔術とか非現実装置は、出ないのか、と思ってましたが、
最後の最後で妖怪小説になってくれましたね。
まさか、そんな展開にしてしまうとは、最後だけなんか別の小説じゃないの?
とも思えなくもないが、まあいいか。
割と面白い
2008.11.05
『砂の女』 ―けっきょく世界は砂みたいなものじゃないか 【安部公房】
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砂の女
安部公房
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男は訪れた部落で、砂の穴のそこにある一軒家に閉じ込められた。
そこには一人の女がいて、日々なだれ落ちてくる砂を掻き、生活していた。
なんとかして、逃げ出そうとする男であったが、うまくいかない。
仕方なく、男は女との生活を続けていたが・・・
//
表面的な読み方では、世にも奇妙な物語にあるような変な話である。
蟻地獄のような異質な閉鎖空間での品位地上での圧迫感みたいなものと、
女との2人暮らしという日常の融合された部分の奇妙な味わいがある。
基本的には、なんとかそこから逃げ出そうとする男との無駄な戦いの先の話なんだが、
なんか、逃げ出さなくてもいいかも?という誘惑に読者ともども負けそうになる。
基本的に、読むのが難しい。
文体もあるんだけど、暗喩みたいなものが多い(気がする)
果たして、自分は理解して読んでいるのか?
まったく理解できてないのでは?と思えて仕方がない。
絶対、表面的な小説ではないと思えるのだが、それしか読めない己の読解力のなさが泣ける。
ジャンルもよく分からない
ホラー?不条理?
異常な空間に閉じ込められるのは、相当怖いと思うのだが、
しかしホラーというのは違っている気がする?
お前馬鹿じゃないの?っていれたくないので、ジャンルは書きません。
正直言うと、あんまり人にお勧めできる小説じゃない。
個人的には、面白かったけど。
それとなく、勝手に出会って勝手に読んでいてもらいたい。
『箱男』
2008.11.04
『黒い家』 ―女郎蜘蛛 【ホラー】【貴志祐介】
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黒い家
貴志 祐介
黒い家、ってタイトルからして、
呪怨みたいなモノ化と思っていたが、
幽霊よりも狂人のほうが怖い、というタイプのホラー
生命保険の会社で働く主人公が遭遇する身も凍るような猟奇殺人
彼は真実を探るうちに、主人公自身とその周囲の人が巻き込まれる
最後にいたる恐怖の描写が凄まじい。
すごく感情移入し、主人公の恐怖がそのままシンクロし、
殺される!という緊迫感、絶望感、現実感が伝わってくる。
敵は、まさに山姥。
子供のころに聞いた山姥そのものだ。
デカイ包丁を持って、慎重に狡猾に忍び寄ってくる恐怖。
あの恐怖を大人になっても感じようと思えば、まさにうってつけの名作だろう。
正直言って、
最初のページは生命保険や心理学的なものばかりで、
怖いというか、いろいろ勉強になるなぁ、としか思えない
最後の100ページくらいが、
この本の読みどころであり、個人的には全て
映像化すると、きっと陳腐になるんだろうな
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日本アパッチ族
小松 左京
小松左京の処女長編
なんだかんだ言って、小松左京の最高傑作だという声も聞く本作
まず、荒唐無稽さが、飛びぬけている。
なんと、鉄を食う人々の話なのだ
人間が鉄を食うなんて発想それ自体が、もはや非凡。
後の作品にも影響を与えているとか、いないとか。
アパッチというのは実際に戦後に存在していて、
鉄くずを盗み生計を立てていた最底辺の貧民だったそうだが、
それをヒント、というかモチーフにして、本作は描かれている。
鉄を食うと人間はどうなるのか?鉄の糞をするのか?体は鉄でできるのか?
そういった設定の数々をSF的な視点で緻密に書いてある。
もちろん、鉄を食うから、体の組成も変化して体が金属化するし、鉄を食って鋼の糞を出す。
鋼の糞はが良質でコストもかからないから、日本の製鉄業が大打撃を被るとか、すごく面白いことにもつながるw
やってることは馬鹿げたことなのに、実物にあるものとしてのシミュレーションに納得力がある。
この作品をサイエンスフィクションといっていいのか分からないが、
荒唐無稽な舞台での”リアル”という意味では、”SF”はかなり高いレベルを持っている。
しかし、そのトンデモとハードSFのバランスの絶妙さはすごい。
もともと、鉄を食う人=アパッチは、社会に捨てられ追放された人々の集合体であり、
彼らが社会を築き、普通の人間との対立を深めていくのが、この作品のメインストーリーとなる。
その中で、アパッチはもはや人間ではなく、新人類的・超人類的なモノとして描かれる。
これはSFという枠にはまらず、社会に対する強烈なメッセージ性も感じられるし、ある種の憧れみたいなものもある。
多分、いろんなところにこじつけもできる。
それは見る人によって感じる部分が違うだろう。
小松さんとしては、戦後まもなくの廃墟のイメージへの郷愁とかあったのだろうか。
個人的には、小松さんの社会を見る目、社会に対して感じている部分がものすごく分かった気がする。
戦争があって、ものすごいエネルギーを消費したのに、
まだ残っているこのすさまじいエネルギーのほとばしりは何だろう。
小松さん自体もものすごいエネルギーでこれを書いたに違いない。
それは、戦後なにもかもが失われたからこそのエネルギーだったのか?
いわゆる、ハングリーの精神!?
社会の中で、強力なエネルギーをもっているのは、
本来的にはこうしたアパッチのような人々だったのではないか?
そういうことを示してくれた作品。
設定自体がぶっ飛んでて、
なおかつラストまでにいたるテンションがすさまじいので、
小松左京読みたいなら、おすすめ。




















